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Kielten Kaiku キエルテン・カイク

ことばコトダマ、弦の響き 古典音律小型カンテレ

伝統的小型カンテレのチューニング

2012年6月、フィンランド中東部、カイヌー地方の町クフモにて開催されたソンメロ民族音楽祭の中で行われた
アルヤ・カスティネン博士(Arja Kastinen)のワークショップ「伝統的な小型カンテレのチューニングと即興演奏」について、
[2013年2月発行の「日本カンテレ友の会」ニュースレター掲載原稿]を元に大幅に加筆し、紹介する。

ここでいう「小型カンテレ」とは、フィンランドの文献等にならって
弦の数は、5本から20本くらいまで、一番短い弦の側を手前にして演奏するタイプのカンテレを指す。
参考:フィンランドのカンテレ協会Kanteleliittoのウェブサイト
kantele.net
 >kantele in English

現在、普及している「小型カンテレ」は主音がD4とされているものがほとんどである。
伝統的には、(パーツを組み合わせるのではなく)厚みのある無垢材をくり抜いて手作りされていたカンテレは、
使用される木材も、出来上がった楽器の大きさもまちまちで、
一台一台、楽器ごとに音域や音高(pitch)、音階(scale)も異なっていた。
参考:アルヤ・カスティネン ウェブサイト(英語版)
temps.fi/en/ 
 >The Polymorphic Kantele多様な形態のカンテレ

チューニングで大切なのは、何よりもまず「その楽器が最もよく鳴る音高の領域を探す」
("The important thing is to find the area of pitch that is best for the particular instrument in order to achieve the best possible timbre."『In Visible Vibration』p.5)ことで、
レッスンの中では、自分の楽器(5弦、10弦、11弦、15弦など)の主音を
電子チューナーを利用して、まずD4(442Hz)に合わせ、
それ以外の弦は五度、四度、オクターブのハーモニクス音を利用して
自分の耳でチューニングしてみることを体験。
(弦の長さの1/2のハーモニクス音=1オクターブ高い音、
 弦の長さの1/3のハーモニクス音=1オクターブ+五度高い音、
 弦の長さの1/4のハーモニクス音=1オクターブ+七度高い音、
 という仕組みを利用。)
チューニング方法の詳細は、アルヤ・カスティネン著『In Visible Vibration』(2011年)参照。)

主音がD4とされている現代の「小型カンテレ」でも、
実際、その楽器が最もよく鳴るのは、主音をどのような音高に合わせた場合なのか、
たとえば、D4より半音低く/高く合わせてチューニングをして、
それを自分の耳で聴いて感じてみることなども勧められた。
ちょっと試しただけでは、その違いを感じ取ることはなかなか難しかったが、
自分の楽器の特徴や癖を理解し、より深くつきあうために
異なる音高でチューニングを試して見ることは必要なことだと感じられた。

また、伝統的には、「小型カンテレ」は基本的に弾いた弦の音を消音することなく共鳴や残響を楽しむ楽器であったので、
アルヤさんは、平均律(*1)よりも純正律(*2)でのチューニングが合っていると考えておられた。
上記のハーモニクス音を利用することで、弦がお互いに純正に響き合う音高を見つけることができる。
(8弦以上のカンテレの場合、五度でのチューニングを続けて行くと「ピタゴラス三度」の問題は残るが。)

そして、最もよく響く/心地よい響きの感じ方には個人差もあり、
また、弾きたい曲の種類や演奏する場所などによっても変わって来る(答えはひとつではない)ので、
なによりも自分の耳を信じてよく聴き比べて探求することをアルヤさんは強調されていた。

さらに、アルヤさん所有の、18世紀~19世紀に実際に使用されていた伝統的小型カンテレの復元楽器
(それぞれ見かけや大きさ、音域も異なるもの)なども使用して、二人ずつペアになって相手が出す音を聴いて、
気持ちよく響き合う音を探しながら鳴らし、感じてみる、という試みもとてもおもしろかった。
(それぞれの楽器の主音を、あらかじめ教えてもらった上で。)

Arja's workshop 2012

このワークショップを通して、今まではソロでもアンサンブルでもカンテレの音色を表面的にしか聴けていなかったことを痛感し、
さらに一段、深い音色や共鳴を聴く意識を持つことができるようなった。


*1 平均律:オクターブを平均的な音程に等分割した音律。また、純正律の複雑な各音程を簡便にして実用的なものとした音律。
オクターブを12の半音に等分した十二平均律が、現在広く用いられている。

*2 純正律: 自然倍音音階に基づいた音律のひとつ。全音階中の主要な完全五度と長三度が和声的に純正に響くように、各音間の音程を単純な整数比で定めたもの。





☆5弦カンテレに関しては、3弦はハーモニクス音を利用してチューニングをすることはできないので、
 3弦以外の弦のチューニングが終わった後で、全ての弦を順番に鳴らしたり、
 3弦と他の弦と同時に鳴らすなどして、ハーモニーや鳴り方を自分の耳で聴いて判断して合わせる。
 また、非常に簡便的なやり方としては、平均律で1、2、4、5弦を合わせてから、3弦については
 メジャーならば平均律より少し低めに、マイナーならば平均律より少し高めに合わせると
 三度の響きが純正に近くなる。

☆このようにハーモニクス音を利用して小型カンテレのチューニングをすると
 「ピタゴラス三度」の問題(長3度の音が不協和)が出て来るので、
 自分が演奏する曲や演奏のスタイルに合わせて、
 音高をずらしたくない方の弦を基準にして、他方の弦の音高を微調整する。

☆チューニングは、基本的には、ハーモニクス音が聴き取れるような静かな場所で落ち着いて一人で行う。

☆人がたくさんいるところや他の楽器などが鳴っていて、ハーモニクス音を聴き取れないようなところで
 チューニングする場合は電子チューナーを利用してもよい。

☆電子チューナーを使用する場合、設定が「平均律」になっているものが多いので、
 自分が合わせたい音律にするには平均律から何セントずらせば良いか数値を覚えておいて
 その音高に合わせてチューニングを行う。

☆追記(2018.06.25)
 アルヤ・カスティネン氏のウェブサイトの「The Polymorphic Kantele多様な形態のカンテレ(英語)」の最終章には
 「小型カンテレの唯一の正しいチューニングというものは存在しない」
(”There is no such thing as the one and only correct tuning for the small kanteles”)と書かれているが、
 そこに至るまでに、アルヤ・カスティネン氏が積み重ねられてきた、非常に示唆に富む、
 小型カンテレの音響やチューニングに関する詳細な研究結果や考察が例を挙げて述べられている。
 小型カンテレのよりよい響きを得ることやチューニングに興味をお持ちの方は、読まれることをおすすめする。


*** 関連資料、リンクなど ***

◎ソンメロ民族音楽祭(Musiikkijuhla SOMMELO):
口承民族歌謡(runolauluルノラウル)の伝統が受け継がれてきた
ロシアのヴィエナ・カレリア地方と国境を接する
フィンランド中東部カイヌー地方の町クフモにて開催されるフォークミュージックフェスティヴァル。
1996年10月に初めて開催された「クフモ民族音楽会Kansanmusiikki Kuhmossa」が前身。
2005年より「ソンメロ民族音楽祭Musiikkijuhla Sommelo」と改称。
2006年からは毎年6月末から7月にかけて開催されるようになり、
フィンランドで活躍する第一線のフォークミュージシャンを講師に迎え
「国際カンテレコース」などのワークショップも合わせて行われるようになった。
音楽祭開催中、クフモ市内のホールや教会、クラブ、屋外などで行われる
様々な民族音楽系のコンサート(3〜15ユーロ。無料のものもあり)は、
国際カンテレコースやワークショップ参加者はすべて無料で鑑賞できる。
また、別途申込が必要になるが、クフモでの全プログラムを終えた後、
国境をまたいでロシアのヴィエナ・カレリア地方に会場を移して行われるプログラムも
非常に魅力的である。

 公式サイト:http://www.sommelo.net/en/(英語)
 公式ブログ:http://sommelomf.blogspot.jp(フィン語/英語併記)
 facebookページ:https://www.facebook.com/sommelo


◎アルヤ・カスティネン:
 プロフィール:
 カンテレ奏者。1963年生まれ。2000年にフィンランドのフォーク・ミュージシャンとしては初めて
 シベリウスアカデミーで博士号取得。1997年から〜2000年、博士課程研究として、
 “Music based on the ideology and the acoustical phenomena of the kantele in the Karelian kantele improvisation”
 (カレリアのカンテレの即興におけるイデオロギーとカンテレの音響的現象に基づいた音楽)と題して
 5回のソロコンサートを行なった。
 また、博士論文のテーマは“An Acoustical investigation of a 15-stringed kantele”(15弦カンテレの音響学的研究)。
 約25年間にわたり、フィンランド国内はもちろん、スウェーデン、ノルウェー、アイスランド、エストニア、ラトビア、
 ドイツ、イタリア、ベルギー、フランス、アイルランド、シベリア、アメリカ、カナダ、ロシア、ベトナム、ブラジルで
 カンテレの演奏活動をおこなっている。
 CD、著作に関しては下記のサイトなどで試聴、購入可能。

 ウェブサイト(英語):http://www.temps.fi/en/
 ネットショップ:https://holvi.com/shop/W9Jtk5/
 You Tubeチャンネル:https://www.youtube.com/arjakastinen
 Sound cloud:https://soundcloud.com/arja-kastinen 
 Facebookページ:https://www.facebook.com/TempsOy/
 アルバム試聴、ダウンロード購入:https://store.cdbaby.com/Artist/ArjaKastinen

 『In Visible Vibration(11弦カンテレ ガイドブック、英語版)』(2011年)
 『HEILANI SYDÄN TERÄKSESTÄ 11-kielisen kanteleen opas(11弦カンテレ ガイドブック、フィンランド語版)』は売切れ。書籍PDFデータのダウンロード購入可。

◎参考文献:
ゼロビートの再発見 復刻版』平島達司 ショパン(2000年。1983年刊の復刻版。)
音律と音階の科学』小方厚 講談社 ¥860

◎その他:
iPhone, iPad用クロマチックチューナーアプリ:「Cleartune
平均律以外の様々な古典音律などにも対応。

  1. 2018/06/21(木) 07:25:59|
  2. kantele/カンテレ
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6/17『絵と音楽で感じる心の宇宙』展〜「銀河鉄道の夜、語り×音楽」

北海道教育大学 アーツ&スポーツ文化複合施設HUGでの『絵と音楽で感じる心の宇宙』展、
最終日の17日(日)、三木沙織さんの『銀河鉄道の夜』の語りに合わせての演奏、無事、終了〜。
ご来場の皆様、ありがとうとうございました。
まずは、自分の出番の時に咳が出なくてよかった。ホッ。

6/17『絵と音楽で感じる心の宇宙』展
【 銀河鉄道の夜 】 語り 三木 沙織、 グロッケン/カンテレ こうの ちえ

グロッケン、古式カンテレ

今回の演奏では、アウリス社のペンタトニック・グロッケン(ピッチ:432Hz、音階:レミソラシレミ、純正調)と
真鍮弦の古式5弦カンテレ(ピッチ:今回は432Hz、音階:今回はソラシ♭ドレから半音上げ、ピタゴラス純正調)を使ってみました。
グロッケンとカンテレを同時に弾くことはなかったのですが、
グロッケンのピッチが432Hzだったので、カンテレのピッチもそれに合わせてみました。

カンテレについては、深みのある低めな音で残響がより長い真鍮弦の古式カンテレを使うか、
現在、一般的に普及しているスチール弦のものを使うか迷ったのですが、
グロッケンが高音でキラキラした音色なのでそれとの対比を意識して、
また、沙織さんが私の古式5弦カンテレのねいろを氣に入ってくださっていることもあって^^の選択でした。

展示初日の13日に初めて若林洋子さんの作品を実際に拝見、
洋子さんご本人にもお目にかかることができて、
サウンドチェックにもご協力いただきました。ありがとうございました。
HUGの石蔵の響の良さは、個人的には昨年12月に行われた「蔵美コンサート」で
経験済みでしたが、今回のセッティングでサウンドチェックをしてみて
すべて生音では「語り」の言葉が聞き取りにくくなるおそれがあったので「語り」のみマイクを使用することに。
それでも、グロッケンが思った以上に響いて、語りを邪魔しない音量に氣を使いました。

上演中、私が決まった曲を演奏したのは、ハミングで歌った賛美歌と
グロッケンでの「星めぐりの歌」のみ。
場面ごとに弾き始めの数音は決めてはいましたが
あとは沙織さんの語りに合わせて即興的に鳴らしてみました。
5弦カンテレはかれこれ10年以上弾いているので、
まあだいたい氣持ちに沿った予想どおりの音が出せたつもりですが、
グロッケンは音に迷いが^^;;;
異次元っぽい幻想的な感じだったと言えなくもないか?!^^;;;

6/17『絵と音楽で感じる心の宇宙』展
若林洋子さんご挨拶

ピアニストの富山惠子さんが、若林洋子さんの素晴らしい世界観の
細密な点描画作品「ミクロコスモス」シリーズに心惹かれ、
この作品全体を多くの方に観ていただきたいということで実現したこの展示&イベント、
惠子さんが体調不良でいらっしゃれなかったことは残念でしたが、
このような形で参加させていただき、いい時間を過ごさせていただきました。^^ 
ありがとうございます。

6/17『絵と音楽で感じる心の宇宙』展
語りの三木沙織さんと^^

写真は撮っていないのですが、「語り」の後に行われたコンサート、
真代さんの伸びやかな歌、寄りそう岩本さんのキーボードのねいろもすてきでした^^

6/17『絵と音楽で感じる心の宇宙』展
終演後、若林洋子さんを囲んで♪
語りの三木沙織さん、コンサートご出演の須田 真代さん、岩本 真由美さんとご一緒に^^

6/17『絵と音楽で感じる心の宇宙』展
若林洋子点描画「ミクロコスモス」部分

6/17『<br />絵と音楽で感じる心の宇宙』展
若林洋子点描画「ミクロコスモス II」部分

6/17『絵と音楽で感じる心の宇宙』展
HUGスタッフさんがご用意された外灯行灯のポスターもすてきでした〜^ ^

HUGのスタッフさん、最終日イベント用の音響調整、照明、会場設営など、お世話になりました。
暖房も入れてくださりありがとうございました。

聴きに来てくださったカンテレ仲間のみなさんも、ありがとうございました^^
インちゃん、順子さん、写真も、ありがとう。^^


『銀河鉄道の夜』三木沙織・語り×音楽、次回は、7月22日(日)、ピアノの富山惠子さんもご一緒に♪
音楽の部分はまた違った構成で、中央区のカフェラボラトリー・ハコさんにて上演予定です。



  1. 2018/06/18(月) 22:19:13|
  2. kantele/カンテレ
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6/30(土)第3回北海道大学フィンランドディ

昨年にひきつづき、北海道大学のフィンランドディ・イベントに関わらせていただいております。


第2部のはじめに「カンテレと歌で綴るフィンランドの風景」と題して

あらひろこさんと「サルミアッキ」でカンテレの演奏と歌をお届けいたします。

最近、「札幌カンテレクラブ」の歌好きのメンバーは、「サルミアッキ」というグループ名でも活動していて、私もその一員です♪



お申し込みは、6月25日までに、こちらから。 http://goo.gl/38gfDR


また、関連企画として北図書館東棟2階のカウンター前では、

6月8日(金)〜7月15日(日)まで「フィンランドディ関連資料展示」も開催中。

私が推薦文を書かせていただいた、フィンランドの民族叙事詩『カレワラ』関連の書籍、DVD、CDも展示されております。

北海道大学の図書館は、学外の方でも手続きすれば1日入館や閲覧可能です。

26(火)、27(水)のフィンランド人留学生のEmmiさん、Armiさんのブックトークも聴きに行こうと思っています。


2018.6.13追記
なお、私が昨年推薦させていただいた書籍、DVD、CDのリストと推薦文は、こちらでもご覧いただけます。
フィンランドの民族叙事詩カレワラ関連、参考資料、CD、DVD」(ブログKielten kaiku 2017/06/26投稿)

上記に加えて、今年は

北欧文化事典』(2017年、丸善出版)、

物語 フィンランドの歴史』(石野裕子著、2017年、中公新書)

の2冊をあげさせていただきました。

追加の2冊については、あらためて、このブログでも紹介させていただこうと思っております。

フィンランドディ関連資料展示



  1. 2018/06/12(火) 21:00:44|
  2. 北大フィンランドディ関連投稿
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